大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

名古屋高等裁判所 昭和24年(控)1037号 判決

被告人

藤原淸次

主文

原判決を破棄する。

本件を岐阜地方裁判所に差戻す。

理由

依つて記録に基き審按するに

第一、原審は証拠能力のない証拠を採用取調べ且つ之を断罪の資料とした違法がある。

即ち原審第一回公判調書の記載に依れば檢察官請求の総ての証拠書類に対し被告人が証拠とすることに同意した記載がない。蓋し刑事訴訟法第三百二十六條の同意は証拠能力を附与する重要な訴訟行爲であるから必ず積極的に明示されることを要し、且つ右意思表示は裁判所に対して爲されることを必要とする。

然るに原審は事茲に出でず單に弁護人の「右檢察官請求の証拠書類中被告人に対する供述調書には異議ありと述べ事実関係立証の爲め云々」と述べたのを漫然異議なき部分に就ての同意と認め之を取調べたばかりでなく其中原判決書挙示の証拠書類を採用し断罪の資料に供したのであるが右証拠書類を看るに其総てが刑事訴訟法第三百二十一條以下の規定に従ひ証拠能力を取調べた形跡なく、従つて其証拠能力を認めることができないものであるから斯る資料を断罪の基礎とした原判決は素より判決に影響を及ぼすべき採証法則の違反ありと謂はなければならない。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例